朗読劇「月夜の猫会議」
2019年、目白の古民家「ゆうど」
飼い猫 リリ・・・青山侑子
野良猫 クロ・・・小飯塚貴世江
ネズミ(演奏)・・・杉山弘幸
脚本・・・杉山響子
ギャラリー
ここにはリリというオボコ猫がおばあちゃんと住んでいます。
そこに野良猫クロがふらりとやってきたところから物語は始まります。
おばあちゃんが取り込んだらしい洗濯物。クロは喉を鳴らしながらその上にゴロリゴロゴロ。
何も知らないリリ登場。伸びやかな声で気持ちよさそうに歌うのは「ねこの歌」です。
「アンタ、誰や! 誰や!」
「私はクロ。ま、名前なんかどうでもいいんだけどね」
クロは外の世界のいろいろをリリに話して聞かせます。流しのゲンちゃんのこと。薄気味悪いアパートのこと。忘れられない猫「デカブツ」が消えた日のこと。
リリは窓から見えるいろいろをクロに話して聞かせます。自分に恋してる小鳥のこと。その小鳥を食べたい自分のこと。おばあちゃんが遠くに行っちゃうように見えること。
クロは出ていきます。お腹のコッコの分まで食べなくては。生きなくては。クロは前にデカブツから聞いた詩を暗唱しながら帰って行きます。「さよならだけが人生だ」
リリはクロを見送ります。「クロちゃん、生きなあかんよ。元気なコッコを産まなあかんよ」リリは少し寂しくなってしまいました。
一人になったリリはふとおばあちゃんが口ずさんでいた詩を思い出します。それはこんな詩でした。
「さよならだけが人生ならば、さよならなんかいりません」
「見えない同居人」
2018年11月、中野「MOMO」
川村一子・・・小飯塚貴世江
レハウネプ・・・近童弐吉
ククリ・・・玉置裕也
演出・・・谷藤 太
作・・・杉山響子
写真撮影・・・石崎五義雄
ギャラリー
川村一子、19歳。恋も知らないまま死んでしまった一子はサークルの先輩マナブのボロアパートで49日を送る決心をしました。
ところがそこには二人の見えない先住者が。一人は何かというと首を吊らずにいられない地縛霊の少年。
もう一人は先輩マナブを追いかけまわしてはちっちゃなイヤガラセを繰り返す、400年前に戦死したアイヌのおじさん。
「先輩の先祖がおじさんを殺したからって先輩本人は関係ないでしょ!」一子はマナブを守る決心をします。
ある時、一子に訪問者が。初七日委員会のお役人が「一子のめでたい初七日」を祝いに訪れます。
お役人は一子に忠告します。「ここは穢れています。怨霊が二人もいる!こんなところにいたら一子さんも穢れてしまいます!」カチンときた一子は二人を追い返しました。
一方、マナブ先輩は部屋の霊現象に慄いて、霊感のある友達を呼びます。「ここに女の気配がする」マナブの友達は一子を怨霊と間違えてしまったようです。
マナブ先輩を守るために入った先輩の夢の中で一子は目撃します。おじさんの悲しい過去。おじさんは和人のだまし討ちに合い、一族を惨殺されていました。
だからおじさんは先輩の勉強に邪魔をします。中国語の勉強も中華料理のメニューにしてしまいます。やはりおじさんの意地悪はちゃちいのでした。
マナブの友達が霊能者を連れてきました。けれど、どうも怪しい。インチキのような当たるような。
それでも霊視の世界の中で一子は生きていたころの懐かしい夏の日を思い出します。「あの夏があってよかった」一子はそう思います。
いつも同じ場所に佇む地縛霊は通りすがりのクロネコだけが友達。けれど遊んでいると過去の忌まわしい声が聞こえてきます。
彼は同性愛者なのでした。それをからかう同級生。責め立てる両親。自殺の原因が彼を苛み、ついに彼を深い眠りへと落としてしまいます。
眠り続ける地縛霊を救うことができなかった一子はおじさんを助けたいと願います。「私を憎い和人と思って斬って!その間私はおじさんの魂のために祈るよ」
どうしても一子が斬れなかったおじさん。すべてを諦め受け入れようとした時、自分の名前を思い出します。「俺の名前はレハウネプだ!」
仲間たちが迎えに来ました。なつかしいお国の歌を歌い、踊ります。一子は笑顔でレハウネプを見送りました。
マナブたちが部屋に入ってきました。ケーキを用意して蝋燭に火を灯します。「今日は一子ちゃんのお誕生日だって聞いたの!おめでとう!」プレゼントは最後の思い出です。
一子もここを去る決心をしました。最後まで分からなかった少年の名前。一子は名前をつけてあげます。「いつも首くくってるからククリ!
あなたはククリ!」
誰もいなくなった部屋でククリは頭を上げます。「楽しかった思い出を取り返すことができたの。あんたのおかげだよ、一子。ありがとう」
自分の苦しみの中にふとわいた言葉「ありがとう」。ククリはそれだけ言うと再び眠りについたのでした。